評価:☆☆☆
70年代の名作ホラー映画『オーメン』(1976)のダミアンの誕生秘話を映画化した本作『オーメン ザ・ファースト』なのですが、名作ホラーの誕生秘話には、だいたいガッカリすることが多いのは僕だけはないはずです。昨年、『エクソシスト』の前日譚が公開されていましたが、評価が非常に悪く、観に行く気力がなくなったのでしたが、これはよくよく考えてみると仕方が無いことだと思います。それと言うのも、名作とは才能のある監督や俳優、優秀なスタッフなどが全力で制作した作品群の中で、予期せず出来が良く仕上がった作品なので、再現性がなく、シリーズ化しても同じことが再現することはなかなか難しいんだと思います。特に、70年代のホラー映画は今のようにCGがない時代だったので、手作りの質感とホラー映画の相性がCGよりは良いのだろうと思います。
このため、あまり期待値を上げないで観てきましたが、主演の俳優の演技力が圧巻で、これはなかなか面白かったです。
本作の主人公はアメリカ人のマーガレットという若い女性で、修道士になるためにローマの孤児院のある教会で働き始めます。マーガレットはこの教会にカルリータという問題行動を起こしている少女を気にかけるようになります。ここに第1作で避雷針だったかに串刺しになって死亡するブレナン神父がやってきて、カルリータについて、恐ろしいことをマーガレットに吹聴します。最初、マーガレットはクレイジーだと取り合わなかったのですが、協会の体質などへ違和感から、カルリータの出生についての調査をするになって、教会の驚愕な真実に行き着く、と言った内容です。
本作では出産シーンが見所の一つだと思うのですが、2回ほど、教会での出産シーンが描かれています。妊婦を拘束して、無入りやり、赤ん坊を引っ張り出しているような、拷問シーンのようなエグいシーンなのですが、日本ではモザイク入りで物議を醸しています。僕個人として、モザイクが無いとキツいなと思いました。かと言って、モザイクが入らないような映像だと、ホラー感が足らないと思います。
よく言われていますが、人間にとって最大の肉体的な苦痛は出産と尿結石だったかと思います(もう一つあったかもしれませんが)。出産は必ず入っていて、この映画の出産シーンはこの肉体的な苦痛と恐怖が入り交じったなんとも過酷な映像体験を観客にもたらしてくれます。うちの母親も私を出産する陣痛で苦しんでいる時に、私の祖父と病院の院長が笑い話していたことを今も恨んでいるので、男性は観た方が良いかもしれないです。
76年の『オーメン』の前日譚というよりは、この作品をオリジナルにしても良いかもしれません。映画の最後は『オーメン』へ繋がる伏線とは別の伏線があったので、マーガレットを主軸とした続編があるかもしれないです。
名作ホラー映画というと、どういうわけだか関係者に不幸が起こります。『オーメン』も主演のグレゴリー・ペックの息子が自殺をしたようですが、『エクソシスト』『ポルターガイスト』などの名作にも不幸があったような記憶があります。日本だと四谷怪談はお参りを怠ると不幸があると言われていますが、ホラー映画にはお祓いが必須ですね。
次回の映画批評は『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の予定です。